先日、民事信託士協会の民事信託と任意後見の連携についての研修がありました。信託は受託者により、不動産や金銭の管理はできますが、身上監護はできません。任意後見は信託で管理できない身上監護などを行うほか、後見監督人が信託そのものも監督するというものです。
任意後見は被後見人となる人があらかじめ自分で後見人を選任しておくことができるというメリットがあります。しかし、実際に任意後見を始めるためには、任意後見監督人が選任されなければなりません。
しかし、信託のシステムは複雑で、判例などが多数あるわけではありません。それため、後見監督人となった弁護士や司法書士といった専門職が信託システムに精通しているとは限らないのです。さらに、信託については、契約の内容について各専門家の間で多様な考え方が並存している状態です。信託契約をつくった専門職が後見監督人になることができればいいのですが、その保証もありません。つまり、民事信託契約をつくった当初の目的など、後見監督人が理解及び共感しないと、混乱を招く可能性があると思いました。
大阪では、任意後見ではなく、成年後見人の選任の申し立てをした場合、候補者として専門職を候補とすれば、よほどのことがない限り、成年後見人に選任されます。さらに、事前に後見人選任の申し立ての準備をしておけば、2,3か月で後見人が選定されます。無理して、任意後見としなくてもいいような気がするのです。
以上の理由で、私は今のところ、信託と任意後見制度併用することに関して懐疑的です。そんなことを考えると、信託というのは、財産管理という面ではかなり強力な手段なのですが、それだけに本当に難しいシステムだと実感します。
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